第63回 ただ読めば良いわけじゃない読書

全国学力・学習状況調査ネタ第2弾です。

今回は、全国学力・学習状況調査の結果を元に、
ここでも度々紹介している読解力に関して考えてみます。

新聞について

小学6年生の8%

今回の全国学力・学習状況調査で注目をあびているものの1つに、「新聞」があります。

この調査は毎年行われており、新聞を読む頻度を小中学生に聞いています。
その割合は年々減少しており、
H25年度は12.2%の小6生が毎日新聞を読んでいると答えていましたが、
10.1%、8.9%、9.0%、と減少し続け、今年29年度では、8.0%まで減少しています。

月に1回以上読む児童で考えても、H25年度の54.0%から、
49.6%、45.9%、45.4%と減少し続け、今年29年度では40.6%まで減少しています。

8%の小学6年生が毎日、20%以上の小学6年生が週1回以上
4割以上の小学6年生が月1回以上、新聞を読んでいると答えています。

新聞は、難しいイメージがあるのかもしれませんが、
小学6年生が、十分に読むことができるメディアであることが理解できます。


小学生の新聞を読む頻度(国立教育政策研究所のHPより)

中学生は5.5%

さて、中学生に目を向けると、こちらも、減少傾向が続いており、
毎日読む中3生は、調査を始めたH25年度が10.3%、
そこから8.2%、7.0%、6.7%と年々減少し、
今年29年度では、5.5%まで減っています。

月に1回以上読む生徒で考えても、H25年度の44.5%から、
40.6%、38.2%、36.3%と減少し続け、今年29年度では30.7%まで減少しています。


中学生の新聞を読む頻度(国立教育政策研究所のHPより)

中学生も小学生も新聞離れが顕著ですが、これは、単純に読まないと言うこともあるでしょうが、
そもそも家に新聞が存在しないというのもあるでしょう。
新聞を購読していない家庭が増えてきています。

塾生に聞き取り調査をしたところ、
うちのような弱小塾では母数が少なくて、データとして役に立つのか分かりませんが、
新聞購読率は2〜3割となりました。

しかし、小学生と比べ、新聞を読んでいる生徒の数が少なすぎます。
いかに、中学生が忙しいかが良くわかるデータではないでしょうか?

読書について

読書の習慣についても調査が行われています。

まず、読書は好きですかという問いに、当てはまると答えた中学生は46.2%、小学生は49.1%でした。
しかし、その割合は調査が始まったH19年では、小学生45.5%、中学生43.5%だった「読書好き」の割合が、今年H29年度では、小学生では49.1%、中学生では46.2%とわずかずつではありますが、確実に増加しています。

小学生
中学生


読書は好きですか(国立教育政策研究所のHPより)

また、実際にどのくらいの時間読書をしているかということで、
「学校の授業時間以外に、普段(月〜金曜日)、1日当たりどれくらいの時間、読書をしますか(教科書や参考書、漫画や雑誌は除く)」という質問もしています。
結果は、2時間以上が小学生の6.9%、中学生の5.8%、1時間以上、2時間より少ないが小学生10.0%、中学生8.4%となっており高い数字とは言えません。
とりあえず、とにかく、少しは読むよという子どもたちで考えると、小学生は79.4%、中学生は64.6%となります。
読書がある程度、習慣化していることはわかりますが、じっくり読んでいないことは明らかです。

こちらは、年によって様々で、割合が高い年もあれば、少ない年もあり、
特に、減っている、増えていると評価しにくい状況になっています。

小学生
中学生


小中学生の平日の読書時間(国立教育政策研究所のHPより)

この結果から、子どもたちの読書への興味関心や、必要性は
少しずつ改善されていることがわかりますが、まだまだであることもわかります。
でも、これで良かったりもします。

読むことと学力

さて、これらの状況と、学力の関係が、公開されています。
結果は、当たり前すぎて、紹介する価値もないかもしれませんが、見て行きます。

まずは、読書が好きかどうかと学力の関係

小学生

中学生

読書好きと正答率(国立教育政策研究所のHPより)

明らか過ぎて、言葉がありません。好きこそものの上手なれと言いますが、
読書好きな子どもは、学力が高い傾向があるようです。
しかも、国語、数学(算数)は関係ありません。

次は、1日の読書時間と学力の関係です。

小学生

中学生

平日の読書時間と正答率(国立教育政策研究所のHPより)

ただ読めば良いというわけではないようです。
ピークは、小学校、中学校、国語、数学(算数)を問わず、2時間以上ではありません。
小学校では、30分〜2時間程度、中学校にいたっては、10〜30分が、ベストなようです。
数字的には、ちょっと意外でした。

今年だけ、たまたまかもしれません。他の年も比べてみます。

とりあえず、平成28年の調査結果です。

小学生

中学生

平日の読書時間と正答率(H28年調査)(国立教育政策研究所のHPより)

やはり、ピークは2時間以上ではありません。
なにごとも、程々にと言うことでしょうか?

でも、言えることは、全く読まない児童・生徒の正答率が、どれでも低いことがわかります。
特に、国語は顕著です。

もう1つ、面白い調査結果があります。
「昼休みや放課後、学校が休みの日に、本(教科書や参考書、漫画や雑誌は除く)を読んだり、借りたりするために、学校図書館・学校図書室や地域の図書館にどれくらい行きますか」という問いがあります。
こちらも、ピークは週4回以上ではありません。

小学生

中学生

図書館の利用数と正答率(H27年調査)(国立教育政策研究所のHPより)

最後に、新聞を騒がせた「新聞を読む頻度と学力」の関係です。

小学生

中学生

新聞を読む回数とと正答率(H27年調査)(国立教育政策研究所のHPより)

一部例外を除き、新聞を読む頻度が高い子ほど、学力が高いことがわかります。
しかし、中学生の場合は、毎日読む生徒と週に1〜3回読んでいる生徒の正答率は、
ほぼ同水準であることもわかります。
また、小学生においても、毎日と週1〜3回の正答率の差は、他に比べて少ないことが分かります。

新聞は、毎日読むにこしたことはありませんが、
中学生においては、週に1〜3回程度読めば十分であり、
小学生においても、週1〜3回が1つの目安になることがわかります。
つまり、まずは、週末と祝祭日だけ読んだので、十分ということです。
ちょっと現実味がある数字ですね。

こちらも、全く読まない児童・生徒の正答率が、どの教科でも低いことがわかります。

文章を読むこと・慣れること


H28理科の入試問題の一部

文章を読むことの大切は、このコラムでも何度も紹介してきました。
入試問題を初めて見た塾生は、まず間違いなく、
嘘でしょ?なにこの文字の量?!」と驚きます。

いかに、素早く正確に読みとることが大切かは、言うまでもありません。

そのためには、しっかり文章に慣れておくことが重要で、
その近道は、読むこと、そして、身近に感じておくことです。

今回の調査でも、それが表れています。
しかし、ただ闇雲に読めば良いということではないようです。

どの調査結果も、読みすぎは、学力を低下させる可能性があります。
これは、ある程度の読書時間が確保できれば、
それ以上は、読書する時間があるのならば、勉強しなさいということだと思います。

そして、以前、第48回で考察した、
読書は成績を上げるが、どこかで頭打ちに合う」ということを
証明しているとも言えます。

まず、慣れるために重要なのは、身近新聞あること
視界に入ってもストレスにならないよう慣れておくことです。

読む、読まないはとりあえず置いておいて、
家に新聞や本が日常的に部屋に置いてあることです。
まずは、そこからのような気がしてなりません。

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