今回は、中学生の放課後の過ごし方について考えます。
中学生にとって、平日の自由になる時間は7時間程度と第62回で示しました。
この7時間を、どのように過ごすべきなのかを考えてみたいと思います。
今回も、学力・学習状況調査の結果を元に考えます。
小中学生の放課後の使い方
学力・学習状況調査では、ライフスタイルに関係する質問がいくつもされています。
その中で、放課後の時間の使い方に関する質問がいくつかあります。
列挙してくと、
- 読書
- 部活動
- テレビやビデオ・DVD
- テレビゲーム
- 携帯電話やスマートフォン
- 勉強
などをどのくらいの時間行っているかが質問されています。
その他に、放課後の過ごし方として、
- 地域の活動
- 習い事
- スポーツ
- 友達と遊ぶ
- 家族と過ごす
- 子ども教室や児童クラブ(小学生のみ)
などが選択肢として設定されています。
この辺りが、文科省が想定する小中学生の放課後の時間の使い方と考えられます。
では、調査対象となった中3生は、放課後、どんなことをどのくらいしているのでしょうか?
中3生の放課後の過ごし方と学力
まず、最初に考えるのは、次の質問です。
放課後に何をして過ごすことが多いですか
- 学校の部活動に参加している
- 家で勉強や読書をしている
- 地域の活動に参加している
- 学習塾など学校や家以外の場所で勉強している
- 習い事(スポーツを除く)をしている
- スポーツ(スポーツに関する習い事も含む)をしている
- 家でテレビやビデオ・DVDを見たり,ゲームをしたり,インターネットをしたりしている
- 家族と過ごしている
- 友達と遊んでいる
(H29年 全国学力・学習状況調査 質問用紙より)
文科省が想定する中学生の放課後の過ごし方は、こんな感じのようです。
複数回答で、選ばないと言うことも可能です。
例)放課後は、即帰って寝る→選べない
結果は、次のようになっています。
中学生の放課後の過ごし方(国立教育政策研究所のHPより)
1番は、やはり部活動。次いで、家でTVやインターネット、家族と過ごす、
そして、中学生なので、勉強です。
この結果から、現在の中学生の放課後は、部活動を終え、
家に帰ると、家族と食事をとり、残った時間はTVやインターネットと考えられます。
では、これらの選択肢と学力の関係はどうなっているのでしょうか?
当たり前ですが、塾、家庭問わず、勉強をしていると答えた生徒の正答率が高くなっています。
そして、「習い事」と答えた生徒も、ほぼ同水準となっています。
習い事をすることは、学力を押し上げるのでしょうか?
そして、第62回で、部活動は、学力を押し上げると考察しましたが、
この結果は、その考察を裏付ける結果にはなっていません。
しかし、部活動ではなく、学校以外でスポーツに取り組んでいる生徒は、正答率が低い結果となています。
また、地域活動に参加している生徒も、異常に正答率が低いことがわかります。
活動時間と学力
では、どのようなことに、どのくらいの時間を使うと、学力がどうなるかを見て行きます。
学力・学習状況調査では、勉強、読書、部活動、テレビやビデオ・DVD、携帯電話やスマートフォン、テレビゲームのそれぞれと時間と正答率が公表されています。
まず、勉強時間と学力の関係です。
学校の授業時間以外に、普段(月〜金曜日)、1日あたりどれくらいの時間、勉強をしますか(学習塾で勉強している時間や家庭教師に教わっている時間も含む)
- 3時間以上
- 2時間以上、3時間より少ない
- 1時間以上、2時間より少ない
- 30分以上、1時間より少ない
- 30分より少ない
- 全くしない
(H29年 全国学力・学習状況調査 質問用紙より)
当たり前ですが、勉強すれば、勉強するほど正答率は上がるようです。
部活動と読書に関しては、第62回、第63回で考察済みなので、結果だけ貼り付けます。
残りは、学力を上げることはなさそうな3つです。
まずは、テレビ。
普段(月〜金曜日)、1日あたりどれくらいの時間、テレビやビデオ・DVDを見たり、聞いたりしますか(勉強のためのテレビやビデオ・DVDを見る時間、テレビゲームをする時間は除く)
- 4時間以上
- 3時間以上、4時間より少ない
- 2時間以上、3時間より少ない
- 1時間以上、2時間より少ない
- 1時間より少ない
- 全く見たり、聞いたりしない
(H29年 全国学力・学習状況調査 質問用紙より)
やはり、TVの長時間視聴は、学力を下げる要因になるようです。
しかし、全く見ない生徒の正答率は、3時間前後、
テレビを視聴している生徒とほぼ同程度の正答率に下がります。
テレビを見るという行為自体に、学力を上げる力がある程度はあると考えられます。
テレビには、報道という役割もあり、また、教養番組でなくても、何かしらを得ることが多いです。
「テレビの視聴=学力低下」と単純には、ならないことは間違いありません。
しかし、今時、テレビを全く見ないという中学生には、
何らかの特殊な家庭事情がある場合が多いとも考えられます。
その辺りが、大きく関係しているとも考えられます。
次は、携帯電話やスマートフォン
普段(月〜金曜日)、1日あたりどれくらいの時間、携帯電話やスマートフォンで通話やメール、インターネットをしますか(携帯電話やスマートフォンを使ってゲームをする時間は除く)
- 4時間以上
- 3時間以上、4時間より少ない
- 2時間以上、3時間より少ない
- 1時間以上、2時間より少ない
- 30分以上、1時間より少ない
- 30分より少ない
- 携帯電話やスマートフォンを持っていない
(H29年 全国学力・学習状況調査 質問用紙より)
利用時間と、正答率には、明らかな相関があります。
しかし、こちらもテレビ同様、全く使わない生徒が、1番正答率が高いわけではありません。
やはり、少しは、利用した方が良さそうです。
機械に慣れておくことは、今の時代、悪いことではありません。
「スマホは1日30分」を守らせる自信がある保護者の皆さんは、是非、買い与えて下さい。
成績が微増するかもしれません。
しかし、守らせる自信がない保護者の皆さんは、
買い与えると、成績が下がることはほぼ間違いありません。
スマホは買い与えずに、キッズケータイで連絡をとれるようにしておくのが、ベターです。
最後は、テレビゲームです。
普段(月〜金曜日)、1日あたりどれくらいの時間、テレビゲーム(コンピュータゲーム、携帯式のゲーム、携帯電話やスマートフォンを使ったゲームも含む)をしますか
- 4時間以上
- 3時間以上、4時間より少ない
- 2時間以上、3時間より少ない
- 1時間以上、2時間より少ない
- 1時間より少ない
- 全く見たり、聞いたりしない
(H29年 全国学力・学習状況調査 質問用紙より)
こちらは、スマホと違い、全くしないの正答率が一番高くなっています。
つまり、テレビゲームには、学力を上げる要因は、ほぼ無いと考えられます。
テレビゲームから得られるものは、無いようです。
ただし、数学に関しては、「全くしない」と「1時間以下」の違いが国語と違ってわずかです。
テレビゲームが、理数脳に形成に若干役立っていると評価できますが、
ゲームする時間があれば勉強しろと言うことでしょう。
結局、「勉強しろ!」ということ
こうやってデータを並べてみるとわかるのですが、学力を上げるためには勉強をすることです。
勉強だけは、時間が長くなれば、長くなるほど、正答率が上がっていきます。
しかし、他のことは、ある程度までは、正答率に相関を持っていますが、
それ以上(以下)の時間を境に、正答率が下がります。
学力に良い影響が出ると考えられる、「読書」ですら、
1日30分という時間がデッドラインになっています。
30分以上読書に取り組んでも、学力は、下がると考えられるわけです。
で、この結果が何を表しているのかと言うと、
何事も程々にして、残った時間は、勉強しなさいと言うことです。
人に与えられた時間は、1日24時間。この時間をどのように配分して、
過ごすかが個々人与えられた選択肢です。
睡眠時間を削る人もいるでしょう。勉強時間を削る人もいるでしょう。人それぞれです。
そして、その削った時間で何をするか。それが選択です。
中学生にとって、自由に選択できる時間は7時間前後です。(第62回で考察)
その7時間をどのように使うかが、選択です。
遊びたい人は、残りの7時間を全て、遊びに充てるでしょう。
ひたすらゲームをするかもしれません。
中学生の8割は、そのうちの何時間かを、部活に充てています。
それは、それで、良いんです。部活には、学力を向上させる力があります。
しかし、それも2時間程度がよりベターで、残った時間は、他のことに時間を充てるべきです。
読書をするのも、30分程度でかまいません。
スマホも1日30分。ゲームはしない。しても30分以内。
テレビは1時間。ドラマかバラエティを1本です。
これで残りは3時間。塾で平均1時間の勉強と、家庭学習2時間。
これで、7時間です。
計算すると、すごく理にかなっています。
読書が良いと言いますが、読書を長時間する時間があれば、その分、勉強しなさいと。
スマホで遊ぶ暇があるなら、勉強しなさいと。
ゲームなんかせずに、勉強しなさいと。
部活もやりすぎてもロクなことがありません。適当に切り上げて、勉強しなさいと。
仮に、部活を3時間やって、その分、スマホを我慢して、勉強に充てるかというと、
そんな中学生は、ごくわずかです。
スマホを2時間触ったからと、テレビを我慢して、その分を勉強に充てるということはないでしょう。
地域行事に参加したら、その分削られるのは、勉強時間です。
結局、何かをすると、削られるのは勉強時間です。
データから読みとれるのは、結局こういうことのような気がします。
地域活動に参加している生徒の正答率が極端に低いのも、こういう話だと考えます。
地域活動に参加する生徒の大部分は、学校の部活動にも参加しています。
学校の部活動に参加した上、他の生徒と比べると、余分な地域活動にも参加。
もちろん、勉強時間なんか残るわけもなく、学力が落ちると。
結局どうやって勉強時間を確保するか
と言っても、そんな窮屈な思いをして、1日3時間の勉強ができるか?と言われて、
できる中学生は多くは、ありません。
また、あれもダメ、これもダメでは、成績につながらないことは、調査結果からわかります。
やるべきことは、やらなければいけませんが、それなりにして、やりたいこともしっかりやる。
あとは、やりたいことをやった分、その分、しっかりと勉強時間も確保する。
データを見ていると、いかに中学生が多忙で、時間が足りていないかが良くわかります。
中学生には、中学生の世界があり、その中で生きています。
大人がくだらないと思うことも、切実だったりします。
その辺りをしっかり理解して、適切に対応し、導いてあげるのが、
大人の役割であるような気がします。
こちらもチェック
|