暖冬とはいえ、急に寒くなり、インフルエンザが気になる季節になってきました。
インフルエンザ対策には、湿度を保つのが一番と言われています。
湿度を保つために、加湿器を利用している人も多いと思います。
夏の熱中症対策も含め、湿度計が普及してきたとはいえ、
湿度計がないご家庭も多いのではないかと思います。
そこで、今回と次回で、湿度計がなくても、
気温のみから、加湿器の必要性を考える方法を考えてみたいと思います。
なお、当塾では、教室に乾湿計を設置していますので、
いつでも、湿度の確認ができると同時に、入試対策ができるようになっています。
乾湿計で湿度を求める問題はよく出ます。
そもそも湿度とは
まずは、そもそも湿度とは何か?という話です。
簡単に言うと、空気の湿り具合を表した尺度です。
湿度と一言で言っても、実は2種類あり、相対湿度と絶対湿度と言うそうです。
中学校の理科の教科書に載っている湿度は、相対湿度のことで、
飽和水蒸気量と現在の水蒸気量の割合(%)で表します。
計算方法は、次の通り
湿度(%)= |
現在の水蒸気量(g/m3) |
×100 |
|
飽和水蒸気量(g/m3) |
単位がパーセント(%)なので最後に100倍します。
現在の水蒸気量というのは、今、空気中にある水蒸気の質量になります。
空気は、地球上、どこに行ってもありますし、つながっています。
どこまでの範囲で、空気中かということを考えると限がないので、
そこにある空気1m3を基準に考えます。
つまり、今、ここにある空気1m×1m×1mを切り出して、
そこに、何gの水蒸気を含んでいるかを考えます。
湿度の計算に使う飽和水蒸気量って?
飽和水蒸気量というのは、空気中に含むことができる水蒸気の質量をいいます。
こちらも1m3を基準に考えます。そうでなければ、比べられませんので。
そもそも、空気中に含むことができる水の量には、限りがあります。
仮に、1m3全て、液体の水にしたとしても、1000kgです。
空気は誰が何と言おうが、気体です。
理科の教科書によると、水は、気体(水蒸気)になると、体積が約1000倍になると書いていますから、
空気が全て水蒸気だとしても、約1kgです。
実際は、空気全てが水蒸気になってしまうと、息ができませんから、
含むことができる水蒸気の質量に限りがあり、そして、その量が多くないことは、簡単に理解できます。
しかも、水を水蒸気にするためには、温度が必要です。
温度が高いほど、よく蒸発しますね。
飽和水蒸気量は、温度が高ければ、高いほど、多くなるのです。
温度と飽和水蒸気量の関係は、決まっていて、次のようなグラフになります。
気温が上がるにつれて、どんどん飽和水蒸気量が上がっていることが判ります。
各温度の具体的な数字が見たい方はこちら。また、もっと細かく知りたい方はこちら(外部サイト)。
例えば、気温21℃の時の飽和水蒸気量は18.4g/m3です。
この時、空気1m3中に、9.2gの水蒸気が含まれていたとすると、
湿度は、上の式にあてはめて、9.2÷18.4×100=50で、
50%と言うことになります。
では、演習問題です。
気温が17.0℃で、空気中の水蒸気量が8.7g/m3のときの湿度を求めなさい。
ただし、17.0℃の時の飽和水蒸気量を14.5g/m3とする。 |
なんか、塾のコラムっぽくなってきましたね。
解けますか?えっ?!なめるな?簡単すぎる?失礼しました。
答えは、8.7÷14.5×100=60で、
60%となります。
飽和水蒸気量と露点
しかし、ここで疑問が生じます。
どうやって、現在の水蒸気量を知るのか?
これが、難題です。
湿度が判れば、逆算して水蒸気量が判るのですが、
これでは、タマゴが先か、ニワトリが先か・・・と一緒になってしまいます。
そこで利用されるのが、露点を使った方法です。
これも、よく入試に出ます。
露点(ろてん)とは、露がつく温度のことを言います。
朝や夜、外に出ると、雨が降ったわけでもないのに、車や自転車が濡れている。
そんな経験があると思います。それが露(つゆ)です。
露は、基本的に、気温が下がると発生します。その露が発生する温度のことを露点と言います。
そして、露がつくことを結露と呼びます。入試には出ませんが、日常生活でよく目にする言葉です。
例えば、気温21℃、湿度50%のとき、空気中にある水蒸気量は、9.2gです。
このとき、この状態で、気温が下がると、当たり前ですが、飽和水蒸気量が下がります。
気温18℃で、飽和水蒸気量は15.4g/m3ですから、湿度は59.7%
気温15℃で、飽和水蒸気量は12.8g/m3ですから、湿度は71.9%
気温12℃で、飽和水蒸気量は10.7g/m3ですから、湿度は86.0%
気温10℃で、飽和水蒸気量は9.41g/m3ですから、湿度は97.8%
と、気温が下がると、飽和水蒸気量が下がるので、計算すると湿度が上がるという寸法です。
さて、このまま気温が下がり続けると、水蒸気量が飽和水蒸気量を上回ってしまいます。
そうなると、空気中に水蒸気が全て居続けることができず、
一部、液体の水として、地面等に落ちます。これが露というわけです。
夏場、よく冷えたペットボトルを空気中に放置すると、ペットボトルがビチャビチャになるのは、
ペットボトルの周りだけ、急に冷やされ、気温が露点を下回り、結露したというわけです。
イスが16脚あります。
このイスの数が飽和水蒸気量。
↓
→
イスにサイちゃんが8匹座りました。
サイちゃんが水蒸気量。
この時の湿度は50%
↓
→
気温が下がり、イスが2脚減りました。
サイちゃんは全員座れています。
この時の湿度は57%
↓
→
さらに温度が下がり、イスが減りました。
サイちゃんは全員座れています。
この時の湿度は73%
↓
→
さらに気温が下がり、イスが減りました。
あまりのイスが無くなりましたが、
サイちゃんは全員座れています。
この時の湿度は100%
↓
→
さらに気温が下がり、イスが減りました。
1匹座れなくなりました。
この座れないサイちゃんが露です。
この時の湿度は100%
したがって、気温を下げていき、結露し始める瞬間を見つけることができれば、
その時の温度の飽和水蒸気量がその時の水蒸気量になるというわけです。
最後に例題です。
気温が23℃の実験室で、水の入った金属製のコップに、
よくかき混ぜながら、氷水を少しずつ入れていくと、水温が18℃になったところで、
コップの表面がくもり始めました。この時の実験室の湿度を求めなさい。 |
超基本の問題です。気温と飽和水蒸気量の関係がわからないと解けないので、こちらの表を使います。
解答は、まず、23℃の飽和水蒸気量を調べます。→20.6g/m3
水温をコップの表面温度とすると、18℃で結露し始めたので、露点は18℃となります。
したがって、18℃の飽和水蒸気量を調べます。→15.4g/m3
これで、現在の水蒸気量と、飽和水蒸気量がわかったので、あとは計算するだけです。
15.4÷20.6×100=74.8
したがって、湿度は、74.8%となります。
これが、湿度の基本になります。
そんなに難しいわけではないのですが、ちょっと癖があるので、
ちょっと、理解しがたいところがあるようです。
なんとなく理解していただけたでしょうか?
次回は、これをもとに、加湿器の必要性を考えてみたいと思います。
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