第32回 大きく2つに分かれる教科の特性

教科には、大きく分けて、積み上げ型教科独立型教科に分かれます。
このコラムでも、数学は積み上げ教科と何度も書いてきました。
数学のほかに、積み上げ型教科として有名なのは英語です。

それ以外の理科、国語、社会は、積み上げ型教科に対して、独立型教科と呼ばれています。

今回は、この積み上げ型教科独立型教科のお話です。

積み上げ型教科とは

ここは、理数系専門学習塾のコラムなので、数学を例にとって考えてみます。

例えば、三角形の面積の求め方を例にとって考えましょう。

三角形の面積の求め方は、底辺×高さ÷2です。
A君は、それを授業で習って、「なるほど!」と思いました。

先生が、「底辺は2cm、高さは3cmです。面積を求めてください。」と言いました。

A君は、すぐに、2×3÷2と書きました。
しかし、それ以上筆が進みません。

なぜでしょう?

それは、A君はかけ算と割り算ができないのです。

バカみたいな話ですが、これが、数学が積み上げ型教科である所以です。

それでは、中学校の話をします。

1年生の内容は、正の数・負の数から始まります。
ここで、マイナス(負)という話を勉強し、基本的な計算方法を習います。

このマイナスという概念をふまえて、続いて、文字の式を学習します。

その次は、方程式です。方程式は、もちろん、文字を使った文字式です。
文字の式を理解せずに、方程式を理解するのは、方程式を1から開発するようなものです。

さぁ、続いて立ちはだかるのは関数です。1年生では、比例と反比例を学習します。
比例の一般式は、y=axです。
おっと、方程式で練習した等式がいきなり出てきました。死にそうです。

そして、続きますのは、図形です。

ここでは、関数の知識、方程式の知識はあまり使いません。
単元が図形になった瞬間、数学のテストの点が上がる人がいるのは、このためです。

ですが、面積や体積を求めなければいけないので、計算はできなければいけません。
面積を文字でおくこともあるので、文字の式も出来なければいけません。

図で表すと、こん感じです。


前の単元の上に新しい単元の知識を積み上げる

図のように、積み木をイメージするとわかりやすいと思います。
土台である「正の数・負の数」や「文字の式」がきちんと積めていなければ、
その上に、どんな積み木を重ねても、上手く積み重ねることはできません。

つまり、文字の式がわからないのに、比例が理解できるわけがないということです。


完璧に積み上げられた知識の積み木
 

あちこち抜けている知識の積み木
いつ崩れてもおかしくない。

これが、積み上げ型教科です。

独立型教科とは

続いて、独立型教科について考えます。

独立型教科も、理数系教科である理科を例にとって考えます。

中学校の理科の単元は、どの学年も基本的に大きく4つに分かれています。
理科は、2年生を例にとって、この4つの関係を考えます。

2年生の理科の単元は、「動物の世界」「天気とその変化」「電流とそのはたらき」「化学変化と原子・分子」の4つです。

単元の名前を見ただけでもわかりますが、それぞれの単元の関連性がよくわかりません。
それもそのはず、それぞれの単元の関連性は、あまりありません。

ですので、教科書によって、単元の並びが違います。
また、さらに、学校によって、取り組む順番が違います。

A中学校では、「動物の世界」から取り組みますが、B中学校では、「電流とそのはたらき」から取り組みます。
また、C中学校では、理科の先生が2人いて、「天気とその変化」と「化学変化と原子・分子」を並行して取り組みます。

このように、どの単元から取り組むかは、学校の都合や、教員の考え方で決まるのです。

したがって、以前学習した内容を覚えてなくても、単元が変われば、全員0からスタートすることが可能なのです。

図で表すと、こんな感じです。


それぞれの関連が薄く、他の単元の知識をあまり使わない

それぞれに関連性が薄く、独立しているので、独立型教科と呼ばれるわけですね。

ただ、理科は、微妙な部分があって、
それぞれの単元の関連性が薄いと言っても、それぞれが密接に関連していたり、
単元の中では、それぞれ積み上げ型の特性があったりします。

とりあえず、どこから勉強すれば良いの?

積み上げ型教科と独立型教科の違いは、分かっていただけたでしょうか?

さて、このような違いがあるため、学習の取り組み方も大きく変わってきます。

まず、独立型教科です。
これは、それぞれの関連性が薄いので、「勉強しよう!」と決心したその時に、
その時から始めたので何とかなります。

今やっている単元を最初から復習すれば、それだけで、定期テストでは高得点が取れるでしょう。

定期テスト対策としては、それで十分です。

ただし、サボった単元は、点が取れないわけですから、
実力テスト対策や入試対策では、全てを復習しておく必要があります。
しかし、小学校の内容まで復習する必要はありません。

次に、積み上げ型教科ですが、これは、分からなくなった時には手遅れです。

とりあえず、その日やったことを復習して、それでもわからなかったときは、
おそらく、自分では手のほどこしようがないでしょう。

今、分からないという事は、それ以前のどこかでつまづいている可能性が高いです。

それが、一昨日やったことなのか、去年やったことなのか、はたまた小学校で学習したことなのか・・・

いつやったことか分かれば、何とかなります。

が、わからないから、わからないわけです。

どこから勉強したら良いか分からない。「勉強しなければ」と思った時には、
すでにこうなっている可能性が高いです。

ですから、そうなる前の対策が必要になります。

積み上げ教科の勉強は、歯医者さんと一緒

虫歯になったら、1秒でも早く歯医者に行った方が良いのは、周知の事実です。
虫歯は他の病気と違って、自然治癒しません
歯医者に行って、進行を止めるしか手立てがないのです。

積み上げ教科も同じで、「わからない」と思ったら、即行動しなければ、どんどん悪化します。
独立型教科では、サボっても、次の単元で改めて頑張れば、重症化はしません。

しかし、積み上げ教科は、どこかが抜け落ちると、そこから先は、進めません。
そこで止まってしまうのです。

自然にわかるようになる時が来るとは思わな方が良いでしょう。
ガッツリ勉強してブレイクスルーを狙っているのであれば、話は別ですが。

歯医者と同じで、即治療しなければ、どんどん重症化していきます。

だからと言って、「数学わからない・・・」と思い、
慌てて一斉指導型の、それも予習型の塾に行っても、無意味です。
なぜなら、抜け落ちてわからないのに、さらに、ワープしてもわかるわけがありません。


つまづいたところまで戻って、復習をしなければ、効果は薄いです。

もちろん、そのうち学校の授業が追いつき、抜けているところは埋まります。
しかし、それまでの塾の授業はわからないでしょうし、
塾に追いつこうと努力するのは、明らかに、努力の方向性を間違っています。
この時、必要なのは復習であって、予習ではありません。
ただ、同じ話を塾と学校で2回聞けるので、そこに重きを置く場合は、それも選択肢だとは思います。

結局?

積み上げ型教科は、わからなくなってから、
予習型の一斉指導塾(普通の塾)に行っても、効果は非常に薄いです。

とりあえず、個々に、面倒を見てくれる個別指導型の塾に通い、
学校の授業に追いつくことを目標にしましょう。

中学生がつまづきやすい所はありますが、本当にそこでつまづいているかは、人によって違います。
それを見極めて、的確な指示を出してくれる塾でなければ、効果は望めないでしょう。

予習型の一斉指導塾に通うのであれば、わからなくなる前から通うべきです。
あるいは、せめて学力が学校の授業に追いついてから通うべきです。

間違っても、授業がわからないからと、予習に力をいれるあまり、復習が疎かになってしまった
なんてことだけは無いようにしましょう。

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