今回は、お手軽実験の人工イクラの実験です。
一昔前は、安物のお寿司に乗っていた人工イクラですが、今はあまり見かけなくなりました。
理由は、人工イクラよりも天然ものイクラの方が安くなったからだそうです。
この人工イクラを、お手軽に作ることが出来るので、やってみましょう。
作った人工イクラをペットボトルにつめました。
準備しよう!
準備するものは、基本的に2種類の薬品です。
- アルギン酸ナトリウム
- 塩化カルシウムまたは乳酸カルシウム
あとは、その辺にあるかき混ぜ棒やらカップやらを使います。
プチプチするには、スポイトが必要です。
さて、アルギン酸ナトリウムは、海藻のヌメヌメ成分で、食べ物です。
水に溶かすとドロドロになります。
その性質を利用して、増粘剤としても利用されますし、パックにも使われているようです。
塩化カルシウムは、かなり身近な物質で、冬場、凍結防止剤(融雪剤)として道端に置いてあります。
また、ニガリとも呼ばれ、豆腐の凝固に使われたり、グランドに撒くこともあります。
外の運動部の人は、なじみがあるのではないでしょうか?
乳酸カルシウムは、あまり身近ではなく、
食品添加物として利用されているようですが、よくわかりません。
やってみよう!
アルギン酸ナトリウム、塩化カルシウム(乳酸カルシウム)を水に溶かします。
濃度は質量パーセント濃度で1〜2%程度になるようにしましょう。
乳酸カルシウムは、もう少し濃くします。
細かいことは気にしなくてかまいません。
2つの水溶液ができたら混ぜてみます。
すると、一瞬にして、ゼリー状に変化します。
この時、アルギン酸ナトリウム水溶液に色を付けると、楽しいです。
また、食べるのであれば、味をつけると良いでしょう。
これが、人口イクラのもとになります。
ただ混ぜるだけでは、イクラとは程遠いので、
スポイトで滴下(写真参照)すると、イクラのような丸いゼリーが出来上がります。
非常に、簡単です。
メカニズム
メカニズムは、イオン架橋と呼ばれる化学変化が起きることによって、このような現象が起きます。
アルギン酸ナトリウムも、塩化カルシウム(乳酸カルシウム)も電解質で、
水に溶かすと、電離してイオンになります。
電解質とイオンに関しては、コチラをどうぞ。
アルギン酸ナトリウムは、アルギン酸イオンとナトリウムイオン、
塩化カルシウムは、塩化物イオンとカルシウムイオン(乳酸カルシウムは、乳酸イオンとカルシウムイオン)に電離します。
アルギン酸ナトリウムの化学式は、(NaC6H7O6)n、
塩化カルシウムはCaCl2(乳酸カルシウムはC6H10CaO6)です。
アルギン酸ナトリウムの構造
電離すると、アルギン酸ナトリウムはNa+とC6H7O6-、
塩化カルシウムはCa2+とCl-(乳酸カルシウムはCa2+とC3H5O3-)に分かれます。
アルギン酸イオンの構造
アルギン酸イオンは、ナトリウムイオンよりもカルシウムイオンと仲が良いようで、
アルギン酸ナトリウムは、水溶液中のカルシウムイオンと交換され、
アルギン酸カルシウムになります。
このアルギン酸カルシウムは、高分子で、水に溶けません。
中和の反応で、水酸化バリウムと硫酸を混ぜたときと、似た化学反応が起きます
アルギン酸カルシウムの構造
高分子とは、1つの分子の中に、含まれている原子の数が多いものです。
アルギン酸ナトリウムは、非常に大きな分子なので、
水に溶けにくく、溶けても、ドロドロになってしまいます。
しかし、アルギン酸カルシウムは、アルギン酸ナトリウムのおよそ2倍のサイズになります。
つまり、アルギン酸カルシウムは、アルギン酸ナトリムウムよりも、水に溶けにくくなります。
さらに、アルギン酸は、それ通しが連結しているため、それぞれの分子がバラバラにならず、
くっついて、橋渡しされます。
なので、イオン架橋というらしいです。
単純な食塩の構造と比べると、いかに複雑な構造をしているかわかります。
そして、アルギン酸ナトリウムよりも、アルギン酸カルシウムの方がより複雑であることがわかります。
・・・ ・・・
アルギン酸ナトリウムの連結状況(3つ連結)左右にまだまだ伸びます
・・・・・・
アルギン酸カルシウムの連結状況(ほんの一部) もはや意味不明・・・
単純な食塩の構造
工夫しよう!!
理屈も簡単だし、やることも簡単です。
しかし、上手にイクラのような球状のゼリーを作るとなると、工夫が必要です。
一番の失敗は、アルギン酸ナトリウム水溶液を滴下したとき、
○○カルシウム水溶液に浮いてしまうと上手くいきません。
写真のように、ベチャっと広がってしまいます。
水溶液表面に薄く広がって固まってしまう。
ただ、これでも、ゼリー状になっているので、実験自体は成功です。
こうならないための工夫は、ただ1つ。
それは、アルギン酸ナトリウム水溶液と○○カルシウム水溶液の比重(密度)を比べたとき、
アルギン酸ナトリウム水溶液>○○カルシウム水溶液となるようにする。
これだけです。
ただ、これが結構厄介で、難しいです。
1番単純な方法は、アルギン酸ナトリウム水溶液の濃度を上げて、
○○カルシウム水溶液の濃度を下げることです。
ただ、アルギン酸ナトリウムは、ちょっぴり高価です。
なかなか手に入りにくい代物なので、あまり、濃度を上げたくないです。
そして、○○カルシウム水溶液の濃度は、下げすぎると、こちらは、上手く固まってくれません。
これ、いい感じの濃度にするのは、難しいです。
で、色々やってみた結果、色を付けて楽しむ場合のみですが、次の方法がベストかと。
まず、アルギン酸ナトリウム水溶液の濃度を2%まで上げてください。
塩化カルシウムの濃度は1%です。これ以上下げると、固まりません。
ただ、これではまだ沈みません。
ここからがポイントです。
アルギン酸ナトリウムに色を付けるために、アクリル絵の具を使います。
ダイソーでOK!
この絵具を入れるときに、大胆に入れます。ケチらないでください。
そして、やってみて沈まないときは、絵の具をさらに足してください。
比重が大きくなると、球状に丸く沈みます
要は、絵の具で、比重を上げる作戦です。これで、上手くいきます。
薬品はどこで手に入るの?
もちろん、理科教材、実験器具を取り扱っているお店で購入できます。
しかし、非常に値段が高く、そもそもそんな店どこにあるの?と思うと思います。
実は、次のような購入方法があります。
アルギン酸ナトリウムは、パックとして販売されているようなので、
化粧品屋さんに行けば手に入るかも?
塩化カルシウムは、融雪剤やグランドに撒くにがりが該当するので、
ホームセンターなどで手に入るでしょう。
学校の先生に相談して、少し分けてもらうのも手かもしれません。
が、実は、塩化カルシウムは、もっと身近な所にあります。
それは、押し入れの中。
皆さんの家の押し入れの中に、水とりぞうさんが無いですか?
新品の水とりぞうさんに入っている粉が、塩化カルシウムなんです。
これをそのまま取り出しても良いのですが、
実は、使い終わった水とりぞうさんの中の液体は、塩化カルシウム水溶液です。
これを使わない手はありません。リサイクルです。
ちなみに、約60倍に薄めれば、この実験にちょうど良い塩化カルシウム水溶液ができます。
これ以上濃いとアルギン酸ナトリウムが沈みません。薄いと、固まりません。
60倍の薄め方ですが、カップに4分の1だけぞうさんの水を入れ、残りの4分の3水道水を入れます。
次に、4分の3捨てて、カップの中身を4分の1にします。これにまた水を入れます。これで16倍です。
さらに、4分の3捨てて、水を入れます。これで、64倍なので、完成です。
そこまで神経質にやらなくてもうまくいきます。
水とりぞうさん 中の水は白色ですが、薄めると透明になります。
いずれにしても、見つからないときは、ページ下部のリンクから購入してください。
ダイソーの実験キット
実は、ダイソーでキットを売っています。
これってどうなの?ってことで、実験してみました。
ダイソーの実験キット
結論としては、ちゃんと実験できます。
個人の実験としては、費用対効果は高いです。
何回(何色)もやりたいときは、アルギン酸ナトリウムを買いましょう。
アルギン酸ナトリウムは0.3g入り
乳酸カルシウムは4.6g入り
ダイソーのキットは、アルギン酸ナトリウムと乳酸カルシウムで、それぞれ指示通りに水溶液を作ると、
1%のアルギン酸ナトリウム水溶液と、7%の乳酸カルシウム水溶液ができます。
どうも、乳酸カルシウム水溶液が、濃すぎるようです。色々やってみた結果、
倍に薄めた方が上手くいきます。
しかし、いきなり倍に薄めるのではなく、
上手くいかなかったら、水を少しずつ加えるという方法をとってください。
濃いときは、水を足せば薄められますが、薄くなってしまうと、もう濃くできません。
と言うことで、皆さんも、お手軽実験をやってみてください。
グループで実験すると、何色も色を作れるので、楽しいです。
実験に使えそうな商品
部品は、写真をクリックすると購入できます。
この商品で実験してみたわけではないので、購入は自己責任でお願いします。
アルギン酸ナトリウム |
|
食用アルギン酸ナトリウム。
これなら食べられるらしい。 |
|
パック用の安価なアルギン酸ナトリウム。
余ったらママのパックに。 |
塩化カルシウム |
|
融雪剤の塩化カルシウム。25kg。
安いけど、こんなにいらない!! |
|
水とりぞうさん。
食べないなら、これがオススメ! |
乳酸カルシウム |
|
食用乳酸カルシウム。
これなら食べられるらしい。 |
スポイト |
|
球状にするには必需品。
ダイソーの書道コーナーのもので十分。 |
カップ |
|
紙コップでも可
ただ、透明の方が、中が見えて実験しやすい。 |
かき混ぜ棒 |
|
お弁当を買うとついてくる割り箸でOK! |
アクリル絵の具 |
|
イクラの着色に使います。
ダイソーでOK! |
組合せとしては、パックと水とりぞうさんがオススメかな?と思います。
こちらもチェック!
|