第44回 授業のターゲット

学校にしろ、塾にしろ、複数人を集めて授業を行います。
当然、全員をターゲットにした授業なんか出来るはずがありません。
今回は、そんな話です。

ターゲットは誰なのか?

例えば、赤ちゃんからお爺ちゃんまで、無作為に1000人集めますので、お話をしてください。
なんて言われて、全員が満足できる話ができる人は、絶対にいません。

そもそも、赤ちゃんは、こっちの話が理解できているか判らないですし、すぐに泣きます。
こちらから一方的に話をしても、無意味です。

しかし、赤ちゃん向けのTV番組やイベントがあるのも事実。
上手にやれば、赤ちゃんを楽しませるお話ができるのは、事実です。

ですが、その話を聞いて、中高生や、大人が満足できるかと言われれば、
まず、満足することはないでしょう。

ですから、どういった人を集めるのか?ということが話をするときの大きなポイントになります。

例えば、主婦を集めるならば、子育てや料理や家事の話を、
高校生を集めるならば、若者向けのカラオケやSNSの話、
あるいは、受験の話などをすれば良いでしょう。

さらに、同じ高校生でも、進学校の生徒を集めるのであれば、
受験や勉強方法に関する話をすれば良いでしょうが、
そうでない学校の高校生を集めた場合は、受験の話には興味がないかもしれません。

このように、話をする相手によって、内容を変えなければいけません。

今まで話した内容は、講演会の話ですが、学校などの授業にも当てはまります。

授業もターゲットを決めなければいけない

学校や塾の授業は、ターゲットが中学生(小学生、高校生)のそれも、1学年です。
しかも、内容も、基本的には教科書となります。

ターゲットも何もないような気がしますが、実は、そんなことはありません。

一番わかりやすい例をとって、説明します。

ある中学校の数学の時間に受験対策授業をすることになりました。

市内屈指の進学校を受験する生徒と、実業高校を受験する生徒、
今治で言えば、西高工業を受験する生徒が同じ教室にいます。

Aさんは、入試の最終問題以外は、難なく解けます。
ですから、Aさんは、最終問題が解ける力が欲しいと思っています。
また、B君は、分数の足し算ができません。

AさんとB君は、勉強すべき内容も違えば、対策するポイントも違います。
しかし、同時に同じ内容で授業しなければいけません。

あなたが教員なら、どうしますか?

進学校を受験する子のために、入試の過去問から、最終問題ばかりを抜粋して、解説しますか?
それとも、小学校の分数のドリルを準備し、分数の足し算引き算のトレーニングをさせますか?

いえいえ、きっと、真ん中くらいを取って、「入試の過去問を最初から解説していく」と答えるでしょう。

では、聞きますが、その授業は、前述した2人にとっては、有意義なものなのでしょうか?

十分に得点できる入試の過去問を1番から解説されることが、Aさんにとって、有意義なのでしょうか?
分数の足し算ができないB君にとって、その授業は意味があるのでしょうか?

つまり、全員に意味のある授業をすることは、残念ながら不可能です。
ですから、ターゲットを決めなければいけません。

授業をするとき、残念ながら、1部の生徒が切り捨てられるのです。

普段の授業も同じで、C君に意味のある授業が、
Dさんにとっても意味のある授業であるかは、わかりません。

どこをターゲットにするか?

では、どこにターゲットを決めるかです。
一般的には、真ん中あたりに合わせる先生が多いです。

生徒のその教科の理解度をLv1Lv10までの10段階で分けたとすると、
おおよそ、L4Lv6くらいのどこかをターゲットにしている先生が多いです。

しかし、どのLvをターゲットにするのが正解であるとは、なかなか言いきれません。
Lv10をターゲットにした高度な授業は、Lv10の生徒達には非常に充実した授業になるでしょう。
しかし、ほとんどの生徒は、理解できず、落ちこぼれます。

一方で、Lv1の生徒をターゲットにした授業は、非常に簡単で分かりやすいでしょう。
分かりやすいですが、Lv5以上の生徒達にとっては、物足りないでしょうし、
難しい問題への対応は、自分で家庭学習するしかありません。

だからと言って、Lv5の生徒に合わせた授業をしたところで、
Lv10の生徒には物足りないでしょうし、Lv1の生徒には理解できないでしょう。

結局、万人に合う授業をすることはできないのです。
そこで、多くの学校の先生は、人数の多い中間層をターゲットにして授業を展開するのです。
しかし、それが正しいのかと言われれば、それは疑問符がつきます。
少なくとも、上位層下位層にとっては、自分を無視された授業になってしまうのです。

だからこそ、どのレベルをターゲットにして、誰に泣いてもらうのかを決めなければいけません。
しかし、日本は、民主主義という名の多数決社会です。
半数の以上の人が認めなければ、認めてもらうことはできません。
だから、数の多い層を、ターゲットにすることが多いのです。


得点配置は、普通60点あたりをピークに正規分布する。
中間層である50〜70点の生徒をターゲットに授業を行う。

バカは何をやってもバカ

ところで、こんなことを言った校長がいます。

バカは、どうやってもバカはバカなんだから、放っておきなさい。」と。
もちろん、こんな言い回しではなかったですが、こうとしか受け取れない発言でした。

上位層ターゲットにした場合、上位数人にとっては、非常に有意義な授業になりますが、
ほとんどの生徒にとっては、意味不明の授業になります。

ほんの数人に英才教育をしたい教員は、
バカにはどんな教え方をしてもバカと思っていて、
バカと判断されれば、放っておかれます。

つまり、中間層以下は、どんどん落ちこぼれます。
本来、落ちこぼれなくても良いはずの子たちまでもが、落ちこぼれるのです。

学校には、こういう考えを持った教員が相当数いるのが事実です。

しかし、こういう授業がダメなのかというと、必ずしもそうとは言いきれません。

下位層の生徒が、こんな教員に当たったときは、運が悪かったと思うしかありません。
逆に、上位層の生徒にとっては、運が良かったわけです。

人生、めぐりあわせです。
しかし、自分にはピッタリでも、同時に、たくさんの同級生悲鳴を上げているのです。

逆に、ターゲットを絞る私学や学習塾

公立小中学校では、いろんなレベルの児童・生徒がいるので、
堂々とターゲットを絞ることはできません。
あくまで、結果として、ターゲットを絞っているのです。

しかし、生徒を選べる、あるいは、生徒が選べる
私学や学習塾、高等学校、大学等は話が変わってきます。
逆にターゲットを絞ることにより、それを特徴とすることができます。

高校や大学が、成績により明確にランク分けされ、
さらに、各高校に、選抜クラスと呼ばれる成績上位者を集めたクラスがあります。

これにより、より明確に授業するターゲットを絞り込むことができます。

俗に言う英才教育というやつです。

このように、高校は、ある程度同レベルの生徒を集め
そのレベルに応じた授業を展開するのです。

私学も同じです。
授業料が必要ない公立の小中学校ではなく、
授業料の高い私立の小中学校に行くわけですから、
親や児童・生徒の意識は高いはずです。
そういった児童・生徒をターゲットに、レベルの高い授業を行うわけです。

その学校に行こうと思う生徒は、そういうハイレベルな授業を求めて、
受験・入学することになります。
また、学校側も、そういう生徒を入学させることになります。

学習塾も同じです。
ターゲット層を決め、その子たちにとって、最も適切な授業を行います。
大手さんでは、成績によってクラスを分けて、授業を行っています。

勉強のできる生徒には、よりハイレベルな授業を、
勉強が苦手な生徒には、基礎基本を徹底的に行っていることでしょう。

結局・・・

どんな立派な先生でも、万人に対応できる授業は不可能です。
それでも上手い人は、上手にターゲットを変えて話をし
全員を飽きさせない授業を展開できるでしょうが、
ある生徒1人をとって考えてみたら、それがベストな授業かどうかは、微妙です。

学校で、自分に合った先生に出会えたときは、ラッキー。
出会えなければ、不幸だったと思うしかありません。

校長によっては、「バカは、どうやったって出来ないんだから放っておけば良い」と考えています。

仮に、あなたがバカだと判断されれば、無視されるだけです。

しかし、学習塾は、全て自分で決められます。
だからこそ、しっかり吟味し、自分で、自分に合った教員(塾)を探すことは、重要なのです。

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